ツンデレな彼と甘キュン社内恋愛
…どう、したんだろう。
見つめられたら、余計ドキドキするよ。うるさい鼓動が、何も考えられなくする。
どうしてだろう。その眼差しは、何を意味するんだろう。
触れた指先に問いかけようとした、その時
「青井くん、ちょっといいー?」
「「!!」」
突然トントン、と戸をノックする音と、響いたお母さんの声。それらに私と彼は我に返り、体をバッと離した。
「は、はい」
「寝ようとしてるところごめんね、彼方こっちにいる?…ってあら、美紅もいたの」
「う、うん。でっでも今部屋行こうかなって!」
「ならその前にちゃんと髪乾かしなさいよ」
「はっはーい」
どうやら彼方を探しにきたらしいお母さんに、私は思い切り動揺しながら立ち上がり、そそくさと戸のほうへと向かう。
「じゃ、じゃあ青井くんおやすみ」
「…ん、おやすみ」
そして彼の顔もまともに見られないまま、ささっと部屋を後にした。
離れてもまだ残る、彼の感触。触れた体温はあんなにも冷たかったのに、私の頬を熱くする。
瞼の裏にはその眼差しが焼き付いて、きっと今夜は眠れない。
心の距離が近づくのを、感じている。