ツンデレな彼と甘キュン社内恋愛
「…でも美紅ちゃんの笑顔が向けられるのは、俺じゃないってことも分かってるよ」
「え…?」
「楽しそうな、みんなと同じ笑顔は見せてくれるけど、幸せそうに微笑うのは一人の前だけだもんね」
その言葉は、私の気持ちをよく知っている。わかっていて、それでいて、自己完結せず伝えてくれた。
そんな彼にきちんと向き合わないのは、失礼だと思うから。
「…ごめんなさい、桐谷さん。私、好き人がいます」
「うん、なんとなく分かってた。あの大きい子だよね?」
「え!?」
そ、そこまで!?
驚き声をあげた私に、彼はまたおかしそうに笑う。
「あはは、やっぱり。美紅ちゃんは分かりやすくて助かるよ。この前も彼に見とれてコーヒー倒しちゃったんだもんね?」
本当によく見ていたらしい。ズバズバと言い当ててみせる彼に、私は手にしていたグラスを置いた。