ツンデレな彼と甘キュン社内恋愛
「あれ、ってことは青井くんも…」
「…別に『見えた』だけで『見てる』わけじゃないから」
誤解しないで、と念押しして彼はガコン、と自販機の下に出てきた缶を屈んで拾う。
その手には、甘党の彼には珍しくお茶の缶。
「?オレンジジュースじゃないんだね」
「うん。今日は違うものが飲みたい気分」
「へー…」
そんな気分の日もあるんだ、そう納得していると青井くんは突然こちらへ近付き、私が持っていた缶と自分の持っていた缶を交換する。
「青井くん?」
「今日は、ココアが飲みたい気分だから」
「へ…?」
そしてそれだけ言って、そのままスタスタとその場を歩き出した。
「……」
私の手に残されたのは、温かなお茶の缶ひとつ。
つまりそれはココアとお茶を交換してくれるということで、さりげない彼の優しさだった。