愛を知らないあなたに
言い伝え
昔々ある山に、1人の鬼がいました。


鬼はよく山のふもとに下りてきて、村人たちを襲いました。



ある時は痛めつけ。

ある時は家を荒らし。

またある時は畑も荒らしました。




村人は、怖れながらも泣き泣き訴えました。


「やめてくださいませ、鬼様。

このままでは、わたくしどもは安心して生活できません・・・。」



その言葉を聞いた鬼は、それならばと言いました。


「ならば、俺はお前達を襲うのをやめよう。

ただし、百年に一度、1人の生贄を俺に捧げろ。


生贄は、俺が食うための人間だ。

そうだな・・・できれば若い奴がいい。」




困りきっていた村人達は、仕方なく――






「・・・・・・分かりました。」






―――そう、答えたのでした。












そうして、それから百年に一度。


若い男や女が一人で、山奥へと登っていきました。



けれどやはり。

誰一人として、帰ってはきませんでした・・・・・―――――。





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