愛を知らないあなたに
あたしは、生贄なのに・・・。

言い伝えでは、鬼は自らが食べるために生贄を求めるのに・・・。



「タマ、タマはなんか知ってるの?」


りょっちゃんがタマに聞いている。


「んー・・・。知ってるよーな知ってないよーな・・・。

でも、わかるのは、琥珀のもんだいだっていうことかな。」



琥珀様の問題、かぁ。


琥珀様に、一体何があったんだろう。

あたしは、何かしてしまったのだろうか。



「ま、リンはよかったじゃん!食べられなくて。」


「う、うん。そうなんだけど・・・」


実感がわかないというか・・・。

予想外すぎて逆に不安と言うか・・・。




「生贄としてきたんだもんねぇ。

そりゃ、困惑するよー。」


りょっちゃんが、あたしの心を読んだように、しみじみと頷いてくれた。

タマも「あーそっかぁ」と呟いている。




―――そう。


あたしは生贄として、食われるためにきた。


だから覚悟もしてきたつもりだった。


けどその覚悟は『食べられる』ときのもので。

『食べられない』ときどうすればいいのか分からない。





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