愛を知らないあなたに
「代えの着物はないのか?」


「ありません。

あたし、すぐに食べられてしまうと思ってましたから。」



それもそうか。



「・・・・・・あの。

琥珀様はなぜ、あたしを食べないでいてくださるのですか?」


「さあな。」




俺は、前と同じように言葉を返す。


別に、はぐらかしているわけではない。



ただ、俺自身も分からぬのだ。


なぜ、この生贄を食おうと思わないのか。




未だに、全然分からぬのだ。






「それより。

生贄、着物を買いに行くぞ。」


「え?ど、どこにですか?」


「麓の村だ。」


「・・・・・・えぇーーー!!!??」



生贄がパッと目を見開く。


そんなに驚くことだろうか。





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