愛を知らないあなたに
意味が分からず、顔を上げて鬼様の顔を見た。


けれどやっぱり鬼様は無表情。




えと・・・・・・空耳?



「さっきも『鬼さん』などと叫んだり、自分から入ろうとしたり。

お前はやはり他の生贄とは少し違うのだな。」



無表情で淡々と鬼はあたしのことをそう評した。

貶されているのか褒められているのか・・・全然分からない。


そもそも、この鬼が今どんな気持ちなのかも分からない。

この鬼は、感情表現がなさすぎる。




どう反応すべきか迷っていると、鬼様はスッとあたしの横を通り過ぎた。


そして、音も立てずに入り口を開け、あたしを振り返った。



「入れ。

お前は生贄なのだから。」



その言葉に、思わず背筋が伸びた。


そうだ。

あたしは生贄。


この鬼がどんなことを思っていようが、関係ない。



あたしはただ、食われるだけ―――。





あたしは、きゅっと唇を結んで、草履を脱いだ。

そして、神社の中へ足を踏み入れた。





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