愛を知らないあなたに
「申し訳ございません。

もう・・・もう、二度と姿を現しません。


ですから、少し、今だけ少し「うるさいっ!!!!!!」」



遮ったのは、1人の女だった。

40代くらいの女は、生贄をギラギラ光る瞳で睨んでいた。





「早く・・・早く、出ておいき!!!

あの女の子供など、見ているだけで寒気がする!

生贄になって死んだと思っていたのに!!!!!!」





彼女は叫ぶように言う。


狂気じみた声。





「・・・・・・おばちゃん、なに?

リンのなんなわけ?リンがなにかしたわけ?」


冷たい声で淡々と言葉を紡いだのは、タマ。




「は?何よこのガキ!!!

生意気ね!痛い目みたいのかしら?」


ギッと、今度はタマを睨みつける女。



けれど不意に生贄が立ち上がり、女の視線は生贄に戻った。



「・・・着物が欲しいのです。

いただけたら、あたしはすぐさま、ここから立ち去ります。」


生贄は、平坦な声で、けれど大きな声で言った。




< 143 / 377 >

この作品をシェア

pagetop