愛を知らないあなたに
浅葱さんはふと、とても寂しそうな瞳をしました。


けれど、すぐに微笑んで言ってくれました。




『でもね、凜のお母さんは、とても幸せだったと思うわ。


凜を産めて、凜を一目でも見れて。

とてもとても幸せだったと思う。



凜のお父さんは、凜のお母さんが死んでしまってとても悲しんだわ。


でも、凜がいるから、悲しみを乗り越えようとしていた。



あのね、凜。


あなたのおかげで凜のお父さんは、凜のお母さんが死んでも。

笑うことができたのよ。




そう、あの人は頑張っていた。


けれど―――



流行り病が村中に広まって。

凜のお父さんもその流行り病にかかってしまったの。



すでに凜のお父さんは。

雪女の末裔と結婚した裏切り者っていうレッテルを貼られていたから・・・


医者は、凜のお父さんを後回しにした。

他にもかかっている人々は大勢いる、と言ってね。


確かに実際、とても多くの人がその流行り病にかかっていた。

けれど、凜のお父さんのは重症だったわ。



――そして、医者に診てもらう前に、凜のお父さんも、死んでしまったの。』





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