愛を知らないあなたに
ふっと口をつぐんで、浅葱さんはふわりと微笑みました。


哀しそうな瞳を、柔らかく細めて。



『でもね、凜。

あなたのお父さんも、可哀想な人ではなかったわ。


あなたと、ほんの少しでも一緒にいれたことが・・・

とてもとても嬉しいと言っていた。


可哀想な人なんかじゃなかった。



いい?凜。

幸せだったと言える人が、可哀想なわけないのよ。


凜、あなたのお父さんは幸せだった。

あなたのお母さんと出会えて。

あなたと出会えて。

幸せだったと言っていた。



そして凜、わたしは頼まれたの。

あなたのお父さんに。


凜を幸せにしてくださいって。



けど、頼まれずともそうするつもりだったわ。


大切な人達の子供だもの。



でね、今は、凜と一緒にいれてすっごく楽しい。


凜はわたしの子供じゃないけど、わたしの子供みたいな存在。



ねぇ、凜、大好きよ。

愛してる。


とってもとっても。』




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