愛を知らないあなたに
そう。嫌ではない。

鬼様が嫌だということではない。





「あたしは、鬼様が嫌だというのではありません。

嫌うほど、鬼様はあたしを邪険にしたりはしていませんから。


だからあたしは・・・鬼様を、嫌ってはいません。」







すぐ隣にいる鬼様を真っ直ぐに見つめた。

鬼様の表情はやっぱり変わらない。



何を思っているのか、てんで分からないけれど。

それでも、あたしは伝えるべきだと思った。







「あたしが一緒に寝たくないと思ったのは・・・

そ、その・・・・・・あの・・・は、恥ずかしいからで・・・・・・」



言った途端、かぁっと顔が赤くなったのが分かった。



鬼相手に赤くなるとか、おかしすぎる。


けど、言ってみたら予想以上に恥ずかしかったんだから、仕方ない。





―――沈黙。



なんだろう、この、妙にいたたまれない沈黙。


あたし、やっぱり言わない方が良かった?





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