愛を知らないあなたに
第一章
生贄のあたし
◆凜side◆
『大丈夫。あなたは、愛されて生まれてきた。』
蘇るのは、あの人の真っ直ぐな声。
『忘れちゃ駄目よ、凜(リン)。
あなたは、愛されて生まれてきたし、わたしはあなたを愛してる。』
大丈夫。
忘れない。絶対絶対忘れないから。
『忘れないで―――。
たとえ誰もあなたを見なくても・・・
あなに構わなくても・・・
あなたを思っていなくても・・・
あなたは、愛されてたの。
忘れないで――ね?』
ぎゅっと、かけているネックレスを握った。
忘れない。
忘れないよ、浅葱(アサギ)さん。
綺麗な浅葱色の、四葉のクローバーの形のネックレス。
浅葱さんがくれた、最後のあたしへの誕生日プレゼント。
あなたの幸せを祈って。
そう言ってあたしにくれた、あたしの宝物。