愛を知らないあなたに
第三章
美しい女
◆凜side◆
「・・・あれ?琥珀様遅くない?」
神社の中に入って、濡れた着物を着替え終わったけれど、まだ琥珀様はいない。
あたしの問いかけに、タマが笑って答えた。
「うん、おそいねー。」
「・・・・・・何かあったのかな?」
「うん、たぶんあったんだよー。」
「・・・・・・琥珀様のとこに行って「きゅうりがないよーっ!!!」」
あたしの言葉は悲痛な叫びによって遮られた。
声が聞こえた方を見れば、りょっちゃんが涙目になりながらも、のそのそ床の上を這っていた。
どうやら床の下何かにきゅうりが隠されていると考えているようだ。
いや、りょっちゃん、それはないって。
・・・いや、でも琥珀様のことだし、もしかするともしかするかも・・・・・・?
「あれ?リョク、何してんの?」
見るとも無しにりょっちゃんを見ていれば、不意に色っぽい女の声が聞こえた。
あたしはその声が聞こえた入り口の方に、顔を向けた。
―――そして、目を見開いた。