愛を知らないあなたに
「あ、たし・・・?」


あたし、何かそんなに悪いことをした覚えはないのですが。




それとも――


あたしに、嫌っていてほしかったから・・・怒って?





「そうだ、お前が悪い。

嫌じゃないなどと・・・嫌いじゃないなどと言うから・・・・・・。」



やっぱり、嫌っていてほしかったの?




「――なぜ、怖がらない?」



不意に、鬼様が聞く。

さっきのぼやぼやした口調ではなくて、スッとした口調だ。


真っ直ぐにあたしの耳に届く、冷たい声。




「怖がってますよ。」


あたしは、あなたの声にも、視線にも、怯えていますよ。



「いや、怖がっていない。

怖がっているのなら、こんなにも喋らないはずだ。」




―――あぁ、そんなことか。


あたしは真っ直ぐに鬼様を見つめた。



そんなのは、とても簡単な質問ですよ、鬼様。





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