愛を知らないあなたに
「琥珀様・・・・・・。」


絞り出した声は、情けなくかすれていた。



名前を呼ぶだけで精一杯だった。

『行かないで』なんて、言えなかった。




「生贄・・・?」


ゆらりと、琥珀色の瞳が揺れる。

問うように、あたしを見る。



だけどあたしは、俯くことしかできなかった。






「・・・俺はお前に何かしてしまったのか?」



そんなあたしを見たであろう琥珀様がそう聞いてきた。




あたしは小さく呟く。


「いいえ・・・。何も、何もしていませんよ・・・。」


「ならば、なぜ、なぜそんな顔を・・・」



言いかけた琥珀様は、口をつぐんだ。


あたしが、バッと顔を上げ、琥珀様を睨んだからだ。





「だから、なんで分からないんですか?!

あたしは、琥珀様が何もしないからこそ、こんなに、こんなにっ・・・」



胸を痛めているのに。




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