愛を知らないあなたに
けど、あたしは胸が痛いと言えなかった。


言葉が、詰まったんだ。

もの凄く、惨めだって思っちゃったんだ。



そんなこと、言えるわけなかったんだ。




溢れてくる涙を、ぐっとこらえようとした。


だけど――


胸が苦しくて。

こらえられなくて・・・・・・



つぅっと頬を伝った、生温かくってしょっぱい液体。

あぁ、もう、嫌だ・・・。


こんな顔を琥珀様に見せたくはなかった。

こんな姿を薺さんにさらしたくはなかった。




だいたい、あたしの怒りなんて苦しみなんて、自分勝手なことじゃないか。


琥珀様と薺さんが悪いわけじゃない。




頭では、分かっているはずなのに。




ドロドロで滅茶苦茶な感情が、あたしの頬に涙を伝わせる。

声を震わせる。





「生贄・・・本当に、どうしたのだ?」


琥珀様の声が、耳に響く。

絶対零度の声が、凄く、もの凄く辛い。




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