愛を知らないあなたに
薺さん・・・?






『新太郎様・・・』



蘇る。



呟かれた言葉が。

震えた声が。

頬をつたっていた涙が。






蘇って、蘇って、胸が苦しくなる。



あまりに愛おしそうに、呼ぶものだから。

その声の示す感情が、あまりにあたしと似通っているように感じたから。





ドクンッと、心臓が、音を立てる。




でも―――





「なんで、タマが薺さんのそんなこと・・・」


「聞いたことがあるの。」


どこか遠い目。

ふっと目を細めて、タマは続けた。




「薺がそう、謳うようにつぶやくのを、聞いたことがあるの。」






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