愛を知らないあなたに
タマはどこか遠くを見つめながら、哀しそうに微笑んだ。



「薺は、意地っ張りだから・・・。」


薺さんのいる方へ視線を向け、タマは静かに呟く。




「意地っ張りで、とても優しいから・・・。

だから、いっつも自分のことより人のことを考えて、傷つく。」



独り言のように呟いたタマは、あたしの方にふわりと微笑みかけた。




「リン、りょっちゃんのとこ、行こっか。

琥珀と薺はなんにもないって、わかったでしょ?」


「・・・・・・へ?あ、あぁ、うん。」


「うむー。ではではしゅっぱーつ!」



タマは普段とまったく変わらない無邪気な笑顔で、あたしの手を引いて駆け出した。





「ちょっ・・・タマ速っ!!!」


「だってタマだもん♪」



どんな理由?!

っていうか、その身長でこの足の速さは一体なんなの?!


びゅんびゅんと風をきるタマ。

馬並みに速いと感じるんだけど・・・気のせいだよね!?



「タマーは、はっやいぞぉ~はっやいぞぉ~♪」


「・・・いやもうわかったから。充分わかったから。」





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