愛を知らないあなたに
――言い返せないと思ったところで、動揺の波がやってくる。




なぜだ?


薺が謝るのが道理というべきなのに・・・なぜ、薺より先に俺が生贄に会いたいと思う?


なぜ、今すぐ会いたいと、いてもたってもいられないような心地になるのだ?





なぜ――




『なんで分からないんですか?!』


『なんでも、ありませんっ・・・・・・。』




生贄の言葉と泣き顔が、ぐるぐる頭の中に浮かぶ?







どうして。


生贄を今すぐ抱きしめたいと思う?









「あぁーあ。ホント、ムカつくなぁ・・・。」


薺が、苦笑のようなものを浮かべている。




「純粋すぎて、真っ直ぐすぎて、ムカつくー。

もぉ、また当たりたくなっちゃうじゃん。」





< 267 / 377 >

この作品をシェア

pagetop