愛を知らないあなたに
人間は、妖怪を恐れ、嫌悪するものであるのに。


雪女の血が入っているとはいえ、それはかすかなもの。

人間であるということに変わりはないだろうに、なぜ?


なぜ、そんなに本気で怒る?




生贄は、俺の言葉に、キッと顔を上げた。

睨むように、俺を見る。真っ直ぐに。



「琥珀様はあたしをなんだと思ってるんですか?」


「生贄であり、かすかに雪女の血が混じった人間であろう?

他に何がある。」




何かに耐えるように、一瞬生贄が唇をぎゅっと噛み締めた。

睨むように、ではなく、俺を睨んだ。






「琥珀様はあたしをナメすぎてます。」






放たれた言葉は、およそ生贄らしくも――人間らしくもなかった。


ギッと生贄は俺を睨みながら言葉を続ける。





「あたしは、人間だとか生贄だとか以前に、凜なんです!

凜っていうたった一人の生き物なんです!


あたしは、人間だけど、生贄だけど、りょっちゃんもタマも・・・琥珀様も。

あたしにとって大切な存在だって思ってます。好きだって・・・思ってる。

だから、怒るんだ。」



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