愛を知らないあなたに
「ありがとね。」


「へ」


「あたしの大切な奴らのこと、大切って、真っ直ぐに言ってくれて、ありがとう。」


柔らかな微笑みに、なんだか泣きたくなった。

あぁ、彼女はこんな笑顔もするんだって。

こんなに綺麗な笑顔を見せるんだって。


・・・なんでこんなに、儚く笑うんだろうって。




「だけどごめん。」


薺さんの顔がくしゃりと歪む。



あぁ、どうして?

どうして歪んだ顔の方が儚く見えないの?




「あたしはリンちゃんのこと、嫌いだよ。

感謝はするけど、好きにはなれない。

憎たらしくてたまんない。


だって、」



つぅっと。

薺さんの頬を透明な雫が伝った。


綺麗な、綺麗な涙。




「ずるいじゃない。

妖怪と人間だっていうのは変わらないのに・・・ずるいじゃない!

あたしは疎まれて、呪いかけられて・・・大切な奴らまで巻き添えにして・・・・・・

なのに、あんたは笑って、傍にいれて、ずるいじゃないっ!!!」




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