愛を知らないあなたに
薺さんの声は、震えていて、ゆれていて、か細くかすれていて。


だけど。

悲鳴だと、思った。


これは、薺さんの、これでもかっていうほどの、悲鳴だ。




「・・・どうしてリョクに呪いが?

あたしのせいさ。あたしのせい。

好いた人間の男に、妖怪だってバレて、術者に呪いかけられて。

琥珀たちが助けにきてくれて・・・そのとき。

術者にリョクが呪いをかけられた。


あたしの、せい。あたしの、あたしの、あたしの・・・ふっ、はは、ははは・・・はは、は、は・・・」



乾いた笑い声が、響く。





呆然とした。


何、それ。

なんなんだよ、それ。








――あっりえない。



「で、どうしたんですか?」


「はは・・・え?」


「だから、どうしたんですか?」



真っ直ぐに薺さんの目を見て問いかければ、薺さんは意味が分からないというように首を傾げる。




< 283 / 377 >

この作品をシェア

pagetop