愛を知らないあなたに
ケラケラとタマが笑う。

琥珀様は無表情で、ただ辺りを見渡して、ぽつりとこぼした。



「都か・・・懐かしいな。」


懐かしい?

琥珀様はここに来たことがあったの?・・・・・・っていうか!



「やっぱ都!?」


「え、リンってば何おどろいてるの~?リンが言ったんじゃーん。」


「へ?」


タマ、今なんと?




「あたし別に都に行こうなんて・・・!」


「言ったよ。」


さらりと答えたのは、薺さんだった。

未だにゆらゆら揺れる瞳を、かすかにこちらに向ける。



「リンちゃんは確かに言ったよ。

リョクに呪いをかけた奴のところに行こう、って。」


「確かに言いましたけど・・・て、あれ?つまり・・・」


ふと思い当たったあたしに、薺さんが頷く。



「そうだよ。

リョクに呪いをかけた奴は都に――いや。

正しくは、あの城の中にいる。」




・・・・・・・・・え、し、城の中ぁ!?

都の中、じゃなくて!?




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