愛を知らないあなたに
狐は意味深げにそっと微笑み――




《では、今日のところは帰ろうか。》







―――すぅっと、消えてしまった。










「・・・・・・えっ・・・」




あたしは一瞬、心臓が止まってしまったかのように思った。





消、えた?

嘘・・・・・・・。



何かが。


跡形もなく消え去る。






それはどうしてこんなにも――


背筋を冷たくするんだろう。






「生贄。」


不意に、冷たい声があたしを呼ぶ。




< 30 / 377 >

この作品をシェア

pagetop