愛を知らないあなたに
「鬼、様・・・なんでしょう?」


あたしは、震える手を、ぎゅっと拳にする。




「お前は弱いな。」



鬼様はさらりと言った。

なんでもないことのように。


やっぱり、声は絶対零度で。

何の感情も込められてはいなかった。


蔑みも、哀れみも、呆れも・・・。

何の感情もない声で、淡々とした口調で。



鬼様はただ、事実を述べる。





「はい・・・・・・そうですね。」



あたしは、弱い。


けれど、狐が言ったように“怖いもの知らず”ではないよ。



あたしは、充分すぎるほどに、怖がっている。

それを、見せていないだけだ。





「ジンさんの仰ることは正しい。

生贄、お前は怖いもの知らずだ。」



まるであたしの心を読んだかのように。

鬼様は淡々と言う。


「ジンさんは間違えない。」




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