愛を知らないあなたに
浅葱さんは死んだんだ。


3年前、確かに。


あたしが――看取った。




なのに、なんで、なんで・・・











「その名を呼ぶな。」



ひんやりとした、氷点下の声が部屋の中に響いた。






――違う。

浅葱さんの声じゃない。


低い・・・男の声だ。




「俺は、浅葱じゃない。あんな女じゃない・・・」


ゆらり。

浅葱さんと瓜二つの顔をした、元仮面男が立ち上がる。


手には、あたしから奪ったネックレス。




浅葱さんと同じ・・・綺麗な翡翠色の瞳が、奇妙な光を宿す。


どこか狂気的な光に、背筋がぞくっとした。



浅葱さんじゃない。じゃあ―――




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