愛を知らないあなたに
タマの言葉に頷いた。


「さすがタマだな。よくわかっている。」


「へへ、そうでしょぉ~」


「・・・・・・たぶんなのかよ。」


「ふふ。琥珀らしくないわよね。焦るなんて。」


薺の悪戯っぽい口調にも、頷いた。



「そうなのだ。なぜなのだろうな?」


「・・・・・・わかってないところは、琥珀らしいわね。」


「そうか?」


「えぇ、とても。」



なぜ薺がげんなりした顔をするのだ?


首を傾げたとき――











ガチャッ



奥の方のドアが、開いて、人が出てきた。


一目で質のよいものだと分かる着物に身を包んだ男――




ハッと、薺の身体が強張るのが見えた。

弥助もピリリと表情を引き締めた。

リョクがタマの手を握った。

俺は、目を細めた。



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