愛を知らないあなたに
男が、こちらを振り向いた。





「マルクの振りをした不法侵入者、とは、お前らのことか。」



切れ長の漆黒の瞳は、『お前ら』という言葉とは裏腹に。

薺だけを見ていた。


――憎しみと蔑みを込めて。




あぁ、やはり、やはりこの男――







俺は一歩、端整な顔立ちの男の方へ踏み出して、言った。



「久しいな、第12代皇帝・・・新之助殿。」


すぅっと、皇帝の瞳が細められる。どこか面白がるように。



「あぁ、久しいな、月白の鬼――琥珀殿。
お仲間も、久しいな。

して、今日はどのような用で侵入を?


私は、」



瞳に怜悧な光が宿る。

全てを拒む光。





「もう二度とその女天狗を見たくないと言ったと思うが?」




どこまでも低く冷たい声は、俺ではなく薺に向けられたものだ。

・・・話しているのが、俺だとしても。




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