愛を知らないあなたに
「薺ちゃんおもしれぇなぁもう一杯!」


「へいへい。喜多さん、飲みすぎんなよ。」


「薺ちゃんおもしれぇなぁだいじょぉぶだってぇ~」


「・・・いい加減、繰り返すのやめません?おもしろがってますよね?喜多さん。」


「ひゃはは!バレちったかぁ~。薺ちゃんかわいーからついついー。

な、この後一緒にホテルでも行かないか?楽しませるぜぇ。」


「ご遠慮しておきます。あたし、おじさんには興味ないので。」


「うわぁ、ひでぇ。おじさんだってよぉ。俺、まだ、40代なのにさぁ。」


「ばーか。禿げてる時点でもうおじさんだ。

薺ちゃん悪いなぁ、こんなヤツの相手してもらっちゃって・・・。」



お酒を持ってきた店長が、眉を八の字にさせて謝った。


それが思いのほか可愛らしく見えて、あたしは思わず微笑んだ。




「全然、へーきです。店長、ちゃーんと見ててくれますもん。」


「そうかい。そりゃ、よかった。」


ニコッと、店長も笑った。



・・・うん、あたし、いいとこ選んだな。




人間だと偽っているのは、心苦しいけど、こうやって人と触れ合うのも、いいもんだなって思える。


そりゃ、嫌な人も感じ悪い人もいるけど。

でも、店長みたいな優しい人もたくさんいる。



そういう人に出会えるのって、すごく、幸せなことだと思うんだ。





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