愛を知らないあなたに
しかし一体どこに行くんでしょう。

皇帝は目的ありそうに歩いてるけども。



んー・・・にしても。

見れば見るほど美しいって言葉が似合うな、この人。


涼しげな切れ長の目と漆黒の瞳。

スッと通った鼻筋と、高い鼻梁。

眉は直線的で、意志が強そうな印象がする。

背も高いし、しかも皇帝・・・・・・これ、女が放っておかないんじゃないかしら。



現に、通り過ぎる人々が振り返って二度見してるし。お辞儀してるし。拝んでるし。

嫉妬や羨望の視線が、ぶすぶす刺さってくるし。




おぉ、こわ。

びくびくしつつ、皇帝を追う。





――と。


くるっと、皇帝が振り返って、笑った。




う、わ・・・さすが美形。破壊力がすごい。



「薺、着いたぞ!」





気づけば、あたしと皇帝の目の前には”万華鏡屋・臼井”の看板が。


万華鏡屋・・・?

万華鏡って、なんだっけ?



首を傾げつつ、颯爽と年季の入った小さなお店に入っていく皇帝の後に続いた。





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