愛を知らないあなたに
え、何がやはり?


「俺は薺にそばにいて欲しいようだ。
城に、共に来ないか?」


「はぁ?!おい、新之助、お前、自分が何言ってるかわかって「行きません。」・・・え?」


ぽかんとした顔で、おじいちゃんがあたしを見た。

皇帝も、あたしを見ている。真っ直ぐに。


皇帝の、真っ直ぐすぎる漆黒の瞳に、胸の奥をざわざわさせながら、それでも言った。




「お城には行きません。

あたしは、あの飲み屋に働き始めたばかりです。
こんなに早く辞めたら、店長に申し訳がたちません。

それに・・・まだ短い間しかいないけど、あの飲み屋、好きなんです。」



真っ直ぐに、皇帝の瞳を見つめ返し、深く深く頭を下げた。





「ですから、申し訳ありませんが・・・新之助様と共に、お城には行きません。」





皇帝の気分を害すのは、覚悟の上。

だけどあたしは譲れない。


お店のこともそうだし・・・何より。


お城には、有能な宮廷術者がいるという。

あたしが女天狗だと、バレる可能性が高い。

バレることだけは・・・何があっても、避けたい。




だからどうか、諦めて。




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