愛を知らないあなたに
時間と共に想いは大きくなっていった。


いつの間にかーー

あたしは、新之助様が好きで好きでたまらなくなっていた。




「・・・新之助様。」


「どうした?改まって。」


「好き、です・・・ひゃっ!?」



ぐいっと身体を引く寄せられ、新之助様があたしを抱きしめた。




「ししし、新之助様っ!?」


「ははっ・・・やっと捕まえたぞ、薺。」


耳元で囁かれた、低くて甘い声に、ひときわ大きく心臓が跳ねた。





「もう、離さない。」


「っ、はい!」




どうか、離さないでください。


心の底から、そう願った。





けれどーー

妖怪であることを告げられないあたしがそんなことを願うのは、おこがましかったんだろう。






『新之助様、貴方、騙されてますよ。

そいつは、女天狗だ。』





願いは、叶うことなく・・・

あたしは、呪いをかけられ、一時期彼と共に住んだ城から、追放された。




< 356 / 377 >

この作品をシェア

pagetop