愛を知らないあなたに
そんなに怖がっていたら・・・

抱きしめられて安心することなんてないよね?




狐はそんなあたしをじっと見つめた。



《やっと気付いたか。

だが、おぬしは怯え、怖れるべきだ。


あやつがどれほど人間と似通った姿をしていても、あやつは鬼だ。

人間などとは比べる事もできないほどの力を持っている。


忘れるな。

あやつは鬼で、おぬしは人間なのだと。》





・・・・・・何ソレ。



「そんなの、知ってますよ?

鬼様は鬼で、あたしは人間です。」



首を傾げて言えば、狐はふっと笑みを零した。




《あぁ、そうだな。おぬしは知っている。

頭では、な。

だが、感覚では分かっていない。》


「感覚?」



狐はすっと目を細くして、見定めるようにあたしを見た。




《おぬしは、重ねておるのだな。》


なぜか・・・やけに、あたしの心に響いた。





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