愛を知らないあなたに
「・・・・・・なんか、平和って感じがする。」



暖かな日差し。

静かな空間。

何も起きない、この、ぼんやりとした時。





あたしはいずれ、食われるというのに。



どうしてこんなにも穏やかな心地でいられるんだろう・・・?






「実感が、ないからかなぁ・・・。」


ポツリと呟いた。




食われるということは、あまりに実感がないから。



しかも鬼様は、人間のようで・・・

本当にあたしを食えるのか、ふと疑問に思う。






―――でも・・・


やっぱり鬼様は鬼なのだとも思う。



あの鋭い視線。

絶対零度の声。

感情を表さない美しい顔。



そして・・・・・・


生えていた牙と、見えた長い爪が鮮明に思い出された。




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