愛を知らないあなたに
「詳しくは知らぬが、死んだようだ。」



鬼様・・・いや、琥珀様はさらりと言った。


なんでもないことのように、あっさりと。



あたしはどう反応すればいいか分からなくなってしまった。



「えと・・・その・・・残念、ですね・・・・・・」


「いや、生きていても、会わなかったであろうな。」




え、なんで・・・・・・



あたしの疑問を見透かしたかのように、琥珀様が淡々と言う。




「大切な子がいると言っていたからだ。

だから、山には登らぬと。」


「そうなんですか・・・。」



琥珀様は、その時、寂しかったですか?

あたしはその問いを、口には出さなかった。


なんとなく、分かってしまったからだ。


琥珀様はきっと、1人だったのだ。

だから、“寂しさ”というものを、知らないのだと。




「とても大切な子なのだと言っていた。

その子の名前は教えてもらえなかったが・・・

その女の名前は教えてもらった。」


何の感情も込めずに、琥珀様は呟くように言う。





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