愛を知らないあなたに
ずっと唸っている。



もしや、体調が優れないのか?



だが、鬼である俺にどうしろと――







「あ、さぎ・・・さんっ・・・・・・」



生贄が、途切れ途切れに呟いたのは、俺に名をつけた女の名だった。




「お前・・・知り合いだったのか?」



思わず呟いた。



偶然にも程があるだろう。




勿論、生贄は答えない。


ただただ唸るばかりだ。




「・・・・・・起きるか。」



どうせ寝られぬだろうし。




起き上がろうとすれば、ぐいっと着物を引っ張られた。




意外にも強い力。


俺は、着物を引っ張っている生贄を見た。





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