愛を知らないあなたに
考えるより先に。


体が勝手に動いた。






―――ぎゅぅっ



優しく、でも、強めに。


生贄を、腕の中に閉じ込めた。







「大丈夫だ。俺はここにいる。

お前を、1人にはしない。」



なぜ俺はこんなことを言っているのだろう。


分からぬ。



俺には、関係ないことなのだが。


なぜか、俺は生贄を抱きしめ、静かに言葉を紡いでいる。




一体俺はどうしたのだろう?



分からぬ。

さっぱり分からぬけれど・・・・・・



生贄の涙を、見たくないと思った。

1人なのだと、思わせたくないと思った。




―――そして今。





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