愛を知らないあなたに
そう、何か他に理由が――

理由、が―――


理由――――





『ほら。おいで、凜。』



脳裏に、浅葱さんの笑顔が蘇る。



理由。

浅葱さんがこの山に登った理由。


それは、未だに全然分からない。



あたしの心の中で。

浅葱さんは唯一の温もりで、優しさで、光で。


だから・・・浅葱さんがどうして山に登ったのかが、知りたくてたまらない。



そりゃあ、誰にだって秘密の一つや二つ、あってもいいと思う。

でも・・・・・・


浅葱さんのことは、何だって知りたいし。

あたしに秘密にしていることがあったというのは、なんだかすごく寂しい。



―――いや、そもそも。

秘密だったのかどうか分からない。


けど、秘密じゃないならなんで言ってくれなかったのか。



『あの山に登って、鬼に名前をつけたことがあるんだよ』


そう、なんで言ってくれなかったのだろう。



あたしと浅葱さんは、色んなことを報告したり、話したりしたのに・・・。




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