お隣さんちの狼くん
「…………これなに?」

「昨日借りた千円です。」

「返さなくていいって言ったよね?」

「…借り作りたくないから!」


大神くんが学校に来てすぐ廊下に呼び出した。
千円を返すために。

こんな人に借りなど作りたくない!!


「ふ〜ん。もしかして昨日のキスが効いちゃったのかな〜?」

「バカな事言わないで!私はあんなの何も感じないよ!」


もう本当最悪!!!

大神くんに千円を無理矢理渡して
すぐ走り去った。

大神くんはタラシなんだよ!
こうやって誰にでも普通にキスしてるんだ!
そんな人にまんまとキスされた私が
バカだよ………。


教室に入って自分の席に着いた。

あー、早く席替えにならないかな…
大神くんの隣なんて嫌だよ!!


「ねぇ、中原さん?」

「え?あ、はいっ」


クラスの女子数人が話しかけてきた。
なんだろう…。また質問…?


「昨日、大神と一緒に帰ってたらしいね。」

「えっ…うん…」

「うわ、認めたよこの女!」


………え………?


「てか中原さん彼氏いるんでしょー?
大神にも手出すんだー?」


手出す………?は…?!


「なっ、何言ってるの?!」

「今更とぼけないでよ!転校生だからってあたしらが大人しくしてるとでも思った?!
昨日、大神とキスしてるとこ見た人
何人もいるんだからね!!」

「そっ、それは無理矢理されたんだって!」

「はぁ?彼氏いるのに一緒に帰ってる時点でアウトだろ?!
アンタの言うことなんて信じらんないよ!」

「本当だってば!!」

「てかうちら、みんな大神のこと好きなんだよね〜。もう敵だから中原さんは。」


え!?待ってよ……!!!
なんでこうなるの……?!



そして私と大神くんの噂は
学校中に広まり

学校の大神ファンの女子全てが敵になってしまった………。



「ねえ、知ってる?1年の転校生が大神健二に無理矢理キスしたらしいよ!」

「1年の転校生、大神健二目当てで引っ越してきたらしい!!」

「あの転校生、10股かけてるらしいよ!」



心当たりが全くない噂も同時に広まり
一気に学校の有名人になってしまった……。

ってか、大神くんタラシだよね?!
なんで私がシバかれなきゃいけないの?!


「や〜、さすがに責任感じるわ〜」

「!!!大神くん!!!!」

「10股もかけてるって本当?」

「ふざけないでよ!こうなったのも全部大神くんのせいじゃん!!」

「…ここだと目立つから人気ないところで話そ?」


ここは…黙って着いて行くしかない……。





「……どうしてくれんのよ…」

「こんなに早く噂広まるなんて思わなかったな〜」

「ちょっと!真剣に言ってるの!!」

「怒鳴んなよ。俺が勝手に梨花ちゃんに着いてって無理矢理キスしたって言ってくる。」

「…うん。」

「まぁでも、俺と家が隣ってみんなが知ったらそれもそれで騒ぎになるだろうけど。」


……た、たしかに!!!


「言わないで!!絶対!!」

「んじゃあ彼氏と別れて♪」


は……?!


「なっ、なに言ってるの?!」

「なんかムカつくんだよね。
彼氏との無償の愛みたいなこと語ってるとこが。」

「語ってなにが悪いのよ?!」

「まあ別れる前に俺を好きにさせてやるよ。」


何言ってんの……?!


「……言っとくけど、大神くんなんて絶対好きにならないよ!!」

「言ったね?その言葉覚えとけよ?
後からヒーヒー言うはめになっからな♪
後、俺のおかげでいじめられなくなること感謝しろよ。梨花ちゃん♪」


は………………………
はあぁーーーーーーー?!!!!!

俺のおかげってなによ!!!
原因はアンタだっつうの!!!!!!

てか…………
俺様すぎ!!!!!!

誰がアンタなんて好きになるか!!!




大神くんがみんなの前で私とのことを
完全否定したので
噂はプツンと絶えた。


でもこれから
色々面倒になる予感....




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