いちごパンツのポートレート
涙の幕の張った瞳に飛び込んで来たのは心配そうに舞衣を窺う学の顔だった。
「…どうした?…悪い夢でも見たのか?」
そう問い掛けながら下瞼の際に溜まった涙を親指で掬い取り、頬に流れた涙は温かい掌で拭ってくれる。
優しくしてくれる学の姿に愛しさが込み上げてくるけれど…
同時に夢の内容を話すのは食い意地が張っていると思われそうで気恥ずかしい。
でも絶対に聞き出すまで寝かして貰えない筈だと腹を括った舞衣は口を開く。
「ねぇー学は好きな物は先に食べる派?後から食べる派?」
舞衣は夢に見た内容を整理する為に学に話し掛ける。
「それって…夢の話と関係あるのか?」
怪訝な表情で学が逆に聞いてくる。
「…うん…関係あるの」
舞衣は顔を赤らめながらボソボソと返事をした。
「…う~ん、腹が減ってたら余り気にせずにその時の気分で好きな物が先だったり後だったりで…
腹が減ってない時は好きな物からだな…って事は決まってないのか?」
「そっか…学は一人っ子だものね、誰かに横取りされる心配とかないからそうなるのかな?
私…ホントは好きな物は後から食べる派だったんだけど…
ある出来事が切っ掛けで先に食べる派になったの…今からその話をするね」