いちごパンツのポートレート
子どもの頃に自転車が欲しくて母にお願いしたら
「翔…ごめんね、うちは貧乏だから買ってあげられないの」そう言われた。
母は冗談で涙を零す振りをして子供の俺を誤魔化したに過ぎず
当の本人はすっかり忘れていると思うけれど……
その当時、俺が受けた衝撃は計り知れないものがあった。
「うちは貧乏だったのか……」
それからは母に何かをねだったりする事は一切しなくなった。
欲しい物は自分で手に入れよう
その日から俺はそう思い生きている。
それで俺は小学5年の時に夕刊配達のアルバイトを始めた。
雨にも負けず、風にも負けず頑張って新聞配達をして貯めたお金で
自転車を買うつもりでいたのに……
吟味に吟味を重ねて自転車を選ぶつもりでいたら
母に台風被害にあった車庫の修繕費用にされてしまう
それから何年か経ってお金を返して貰ったけれど……
もう自転車に興味は無くなっていた。