いちごパンツのポートレート
私と母が居る部屋に愛美ちゃんが入って来た…

泣き腫らした目で私の顔を見つめ

「…勝手に使ってごめんなさい」とポシェットを返してくれた

私が走って帰った後にこのポシェットを私がどんなに大事にしていたのか学が教えてくれたと話してくれた…

(いつも一緒に居る学は私がこのポシェットを取り出してはニヤニヤしてまたしまう様子を近くで見ていたのかも知れない…)

この際だ…

前から不思議に思っていたことを愛美ちゃんに聞いてみた

「どうしてメミちゃんは自分の服を着ないで舞衣の服ばかり着たがるの?」

愛美ちゃんが恥ずかしそうにモジモジしながら口にした言葉は私の思いも寄らない事だった

「舞衣ちゃんみたいになりたかったから…
蓮兄に『ブス』って意地悪なこと言われても舞衣ちゃんは泣かないでしょ?
メミも舞衣ちゃんみたいに強くなりたい…
髪も舞衣ちゃんみたいに黒くてサラサラで真っ直ぐになりたい…」

これからも愛美ちゃんが『ブス』と言われる日はこないと思うよ!

私が意地悪なこと言われても泣かないのは蓮兄が本気で言ってないと分かっているから…そして慣れているからだしさぁ…

強いかぁーそれって喜んでイイところ?

でも神経図太い方が何かと生き易いかもね?

「髪も舞衣ちゃんみたいに黒くてサラサラで真っ直ぐになりたい…」

この言葉はズシンと心に響いた…

みんなが可愛いという天使のようなハチミツ色の巻き毛も彼女にはコンプレックスでしかなかったのかも知れない…

私たちは無いものねだりだね?…

でも愛美ちゃんの場合はそれだけではないアイデンティティへの葛藤も感じていた



それから残りの夏休みも私と愛美ちゃんは姉妹のように過ごした…

「舞衣ちゃん…この服貸して!」

「ダメ!今日は舞衣が着るの…でもこの服ならイイよ!」

「うん…アリガトー」

そう本音を言い合える関係に…


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