短編集
その鉄の箱に。

正しく言えば、それに映し出された幻影に。

箱に映し出された世界では、ちょうど女が車道に飛び出した所だった。

走ってきたトラックに接触した女は、甲高いクラクションと共にスローモーションで空へと舞い上がり、重力に従って地面へと叩き付けられた。

倒れ伏した女にすがりつき、わざとらしい程に大声で泣き続ける男。
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