短編集
「ねぇ、キスして」

頬を軽く染めた彼女が甘えるように上目遣いで告げる。

ある言葉がふいに頭に思い浮かんだ。

ああ、そうか。あれがコイツのカタルシスだったんだ。

湧き上がって来る衝動を抑えられない。

頭が真っ白になる。

正方形のテーブルの上に夕食から置いたままになっていたナイフを掴むと、俺は彼女に躊躇なく突き刺した。
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