短編集
昔から、悲しいことがあると君はただ真っ直ぐに空を見上げていた。

友達が転校したときも、飼い猫が死んだときも。

その頃はただその隣にいる事が、僕の役目だった。

「陸君、陸君」

隣の席の女子に軽く肩を叩かれて回想から抜け出した。

前を見ると、知らぬ間に黒板の半分が数式で埋まっている。

指された問題を隣の席の女子に小声で聞いて、予習してきたノートをそのまま黒板に写す。
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