短編集
重い扉を少しだけ開けて、隙間から覗く。

軋む様な音は、ただ空が奏でる激しい曲にかき消された。

君はただ、空を見上げていた。

冷たいコンクリートに寝転んで、世界の全てを受け入れるかの様に。

泣き虫の君は、恐らく目を赤く腫らしているだろう。

でも、絶え間なく降り注ぐ優しい痛みが、君の悲しみも洗い流してくれる。
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