好きな人のお母様に恋心がバレました
「改めまして、静樹の母の朝霞早百合(さゆり)です」
いまだ驚きを隠せないけれど、慌ててお辞儀をする。
「朝霞先輩の二年後輩の宮戸依(より)と申します。
先輩には本当に良くして頂いててーー」
「宮戸さん、この人に
気を使わなくても全然大丈夫だから」
母親と一緒にいるからか、
朝霞先輩はいつもより強い口調で気まずそうにしていた。
しかしそんな息子とは正反対に早百合さんはニコニコと楽しそうに微笑む。
「そうよー?
だってもう私たち恋バナだってした仲ーー」
「わー!!!
ちょっとお母様その話は今はちょっと!!!」
台詞にほぼ被せるように慌てて身振り手振りも交えてNGサインを出す。
あら、と早百合さんは口をつぐむ。
ん?と首をかしげた先輩の様子からどうやら気付かれはしなかったらしい。
(恋バナ、なんて言っちゃったら私に好きな人がいるってバレちゃうよう…)
それはやっぱり嫌だった。