好きな人のお母様に恋心がバレました
第3話:オカンと私と、時々、先輩
(ーーー何ガ ドウシテ コウナッタ。)
今、私は会社の一階のロビーに併設された喫茶店に来ている。
うちの会社は、私が入社できたのが夢のように大手の中でも最大手の大企業だ。
『三波商事にうちの娘内定が決まってぇ〜』が一時期母の口癖だったこともある。
そんな企業の本社の一階にある喫茶店といえば、もう、もうそれはそれは高級感MAXなのだ。
十数階ある大きなビルの吹き抜けは、夕方の橙が斜めに差し込んできて、まるで計算され尽くされた美術館の一フロアのように美しい。
ロビーには何故か小さな滝のようなものが二階から一階へと流れているのだが、この喫茶店ではその滝も吹き抜けもどちらもが完璧な調和でもって配置されている景色を見ることができて、さらにさらにーー
「依さん、貴女は何にする?」
(………ハッ)
「え、えとアイスレモンティーで…」
「じゃあホットコーヒーとアイスレモンティーを」
畏まりました、とウエイターが下がるのを私はなんとも言えない気持ちで見送った。
やばい、完全にこの喫茶店から見える景色を
丁寧に描写することで現実から逃げようとしてしまった……!!!
そう、目の前には何を隠そう朝霞先輩のお母様、早百合さんが優雅に座っているところだった。