好きな人のお母様に恋心がバレました
「……なのに、なのにあの子ってば……!!!」
ガチャン、と大きな音を立てて置かれたのは
早百合さんのマグカップ(コーヒーはまだ半分以上残っているためほとんど溢れる勢い)で。
ビクリと私の肩がはねたのはその大きな音にではなく、ひとえに目の前の女性の鬼のような形相にであった。
「お腹を痛めて産んではや25年!!
一回も!!ただの一回も女の子の影が!!全くもって!!!皆無なのよ!!!」
「……へ?」
「気付くと中高大学、家に来る友達は、男、漢、オトコの一択!!
もしかしてそっちの趣味?って悩んだことも数知れずよ!?
むしろあの子の九つも下の娘の方がちゃっちゃと彼氏作って紹介してくれたのは一週間前!
このままじゃあの子彼女どころか結婚なんて夢のまた夢よ!
あのまま奥手で女っ気もなく30を迎えて妖精になってそのうち魔法使いになるんだわ!!!
私が今際の際に見るのは孫の顔じゃなくて結婚もできずに還暦迎えた息子の顔、ってやかましいわあああ!!」
うわああああん、と頭を抱えた早百合さんに、私は引いた。
ギギ、と椅子を後方へ寄せたのは無意識である。至って意図的ではないとここに記しておく。