好きな人のお母様に恋心がバレました


いきなりテキパキと話し出した私に、
少しまだ疑いの眼差しは向けられているものの。



「本当に?迷惑かけなかった?
例えば親父との惚気とか俺の小さい頃の話とかされなかった?
本当に大丈夫??」



(み、見事に全部話された内容!!息子…恐るべし……)



「だ、大丈夫であります!」



ピシッと敬礼するも、少しだけその通りだと顔に出ていたかもしれない。
朝霞先輩は呆れたように笑って



「母がご迷惑かけました」



全部分かってらっしゃるような菩薩の笑みで返してくれた。



「……本当に楽しかったんです。
お母様を悪く思わないでくださいね」



けれど私はその後朝霞先輩に責められる早百合さんが見えるようで、ついそんなことを口にして俯いてしまう。



だからその時先輩がどんな顔をしていたかは分からない。
気付いたらポン、と頭に暖かい大きな手が乗せられていて。



「宮戸さんは優しいね」



今度はポンポンと頭を撫でられて。
今何が起きてるか、やっと把握した頃にはその手は離れていた。



バッと顔を上げた時に、ちょうど先輩は部長に呼ばれたのか「今行きます」と返事をなさっているところで。
横顔しか見えないから、彼の表情はよく分からなかった。



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